ラーゲリより愛を込めて / 絶望と希望の狭間で、それでも生きる

ラーゲリより愛を込めて (2022  日本)
監督:瀬々敬久

 

あらすじ:捕虜になりました。

ロシア語翻訳家として満州鉄道に勤務していた山本幡男は、日本敗戦後身に覚えのないスパイ容疑でシベリアに送られた。過酷な労働と劣悪な収容所生活に耐えながら、山本は希望を捨てることなく仲間たちを励まし帰国の日を願い続けた。

そして3年後、待ちに待った帰国の日が訪れる。しかし山本ら数名の捕虜たちは突然帰国を取り消され、理不尽な裁判にかけられた結果、今度は戦犯として再び収容所へ戻されてしまうのだった。

 

シベリア抑留からの生還者たちの証言をもとに、日本人捕虜収容所の過酷な生活を描いた『収容所から来た遺書』(辺見じゅん著)を映画化。原作は読んでいませんが、元がノンフィクションなので映画もほぼ実話どおりなのだと思います。犬のクロのくだりはさすがに脚色じゃないのと思ったけど本当でした。びっくりだよ。

実はわたしの母方には当時シベリア抑留された大叔父がいて、死亡通知だけ届いて遺骨も遺品も何もなかったんだよ、という話を聞かされていたので、この映画はすごく観たかったし観て良かったと思っています。
たまたまテレビで撮影秘話みたいなのをキャストがしゃべっているのを見ちゃったもんだから若干の日本感(新潟ロケ)とかハリボテ感とかは拭えなかったんだけど、それを差し引いても、過酷で残酷な収容所生活や捕虜たちの察するに余りある悲痛な感情を表現するには十分な演出であったと思いますね。役者それぞれが役に敬意を払って演じているのがしっかり伝わってくるのも良かった。

 

大叔父は享年21歳だったと言っていたなあ。若い、若すぎるよ。勉強や仕事、恋愛や結婚と日本に帰ったらやりたいことがきっとたくさんあっただろうに... 。山本さんを慕っていたハーモニカ青年が命を落とすシーンでは、彼の姿と顔も知らない大叔父のイメージとが重なって胸が締め付けられる思いでした。

山本さんの遺書が家族の元に届けられるシーンはもう号泣なんだけども、ラストはちょっと唐突というか、頭と終わりが同じシチュエーションというね、技法としてはアリなんだけどあれ、寺尾聰を出したいがためにねじ込んだような気がしてならんのですよね(昔ドラマで山本幡男を演じた)。
というのはだいぶ上からの物言いでして、万人におすすめできる感動的な作品であることは間違いないです。ニノはすごく頑張って素晴らしい演技力を見せていたけれど、個人的には安田顕がピカイチでした。あの役はね、本当に難しいと思う!