別れる決心 / 僕は崩壊しました

別れる決心 (2022  韓国)
헤어질 결심
監督:パク・チャヌク

 

あらすじ:刑事と被疑者が惹かれ合います。

主人公は、強力班の刑事ヘジュン(パク・ヘイル)と韓国で暮らす中国人女性ソレ(タン・ウェイ)。ソレの夫が絶壁から落ちて死亡した事件を捜査するヘジュンは「夫が山に行ったきり帰ってこないので心配していた。“ついに” 死んだのかと。」というソレの言葉を聞き、彼女を疑う。

さらに彼女が夫からひどい暴力を受けていたことがわかり、その疑いはますます大きくなるが決め手となる証拠がない。それからヘジュンはソレを監視し始める。

 

言語の壁があるというのは当人たちにとってもどかしい反面、惹かれ合うには非常にいい環境だった。ソレが時代劇で覚えた韓国語は不自然なときがあって、さっき書いた「ついに=마침내」みたいに、本当は何を言いたいのかとへジュンは気になって仕方ないわけです。

一方でソレの態度は何となく事務的なんだけども、単に韓国語が苦手とかだけではなくて、少し距離を持たせつつも自分の言動次第で相手がどう出るかを分かっているようなね、いわゆる魔性の女っぽい計算高さがある。映画だから面白いけど身近にこんな女いたらイヤだよね(笑)

会話における言葉の選び方とか微妙なニュアンスの違いに注目するという点では、字幕に頼る我々よりもネイティブである韓国人のほうがもっと面白く観られるんだろうなと思います。
まあなにしろ、「言語」を前景化するためにボイスメモや翻訳アプリ、また動画配信やSiriといったアイテムが効果的に使われていたのは良かったし、アングルやカット割りなんかも非常に面白くて最後まで飽きなかったですね。今さらだけどパク・チャヌクの演出の上手さよ!

 

パク・ヘイルは刑事役が初めてらしいんだけど、清廉さと誇りを持って刑事の仕事をすればするほど被疑者にじわじわ食われていく、という気の毒すぎるキャラクターがすごく合っていました。ミステリアスな目のせいもあるのかな。この脚本、完全にパク・ヘイルに当て書きして作ったんじゃないの、しらんけど。

前半と後半で二人それぞれの「別れる決心」が描かれるんだけども、結局女のほうが一枚も二枚も上手(うわて)だったってことか。衝撃的なラストでした。たいへん面白かったです。2回観たけどあと2回くらい観れるな、これ。